ヒト・コト・ミライが交差する
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CASE

新しいパトロネージュが食の世界を前進させる Chefs' Gathering at TRUNK (HOTEL)

2018年2月11日、渋谷の「TRUNK (HOTEL)」のテラススイートに、フレンチ、イタリアン、すし、日本料理などで第一線を走る若手シェフたちが集まりました。主催者は、先日エイチのトークセッションにも登壇された、実業家であり美食家でもある本田直之さん。
「垣根なく、普段の料理でもてなし合いながらコミュニケーションを取ることで、互いに刺激を与え合い、将来のレベルアップにつなげてほしい」との思いで始めたギャザリングは、今回が2回目。
世界で注目される料理人を招いた数日限定の野外レストラン「DINING OUT」を総合プロデュースする大類知樹さん、世界のレストラントレンドを牽引する評価機関「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長を務める中村孝則さんも集まりました。
『料理通信』編集主幹の君島佐和子が、彼ら3人と参加したシェフたちに、シェフ・ギャザリングの意義とこれからの食について聞きました。


料理の専門家ではないから見えているもの

 

本田直之さん。『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』『オリジナリティ』など食に関する著書も多い。
左から中村孝則さん、大類知樹さん、本田直之さん。それぞれの関わり方でレストラン界に刺激を与えている。シェフたちも一目置く存在。

君島:本田さん、中村さん、大類さん、いずれも最近のレストラン界のトレンドを牽引している方々ですね。もともとは別々のフィールドでご活躍でしたが、ほぼ同時期に食のシーンに入ってこられた。

大類:僕が「DINING OUT」を始めたのは約6年前。

中村:僕が「世界ベストレストラン50」の審査員になったのが約5年前です。

本田:僕は5年前から『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』という本を書き始めました。

君島:2012年から2014年あたりに重なっていますね。

中村:ええ。みな料理の専門家ではないという点も共通しています。

君島:そこが時代を反映していると思います。これまではいわゆる料理評論家やレストラン評論家、あるいはメディアが新しい料理人や料理店をすくい上げて世に出していくという流れがありました。でも、今の潮流はそうではなくなってきた。

本田:業界の慣習を知らないし、しがらみもない。食と向き合うことを本業としていないから、自由に動けるのかもしれませんね。

普段着のもてなしをテーマに思い思いに料理を作って、互いにもてなし合う。
「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のルカシェフとパティシエのファブリツィオ。

人的ネットワークを提供する、新しい形のパトロネージュ

君島:本田さんが東京で行うシェフ・ギャザリングは今日で2回目だそうですね。このような集まりを始めたきっかけは何ですか?

本田:(先の)本を書く中で感じたのが、業界内での料理人のつながりが意外とないなということでした。そこで、まずパリで今回のような交流パーティを開いてみたら、参加した料理人から「他の料理人と横断的に触れ合う機会がなかったのでうれしい」という声を聞き、「ならば、つなげてみるのも面白いかな」と。

君島:基本的にメンバーは招待制で、本田さんがセレクトしているとか。

本田:そうですね。ジャンルを超えたトップシェフたちばかりですね。

君島:19世紀まで多くの芸術家がパトロネージュによって創作活動を成立させていましたが、本田さんの活動は、形は変われど、ある種の支援の形(パトロネージュ)ですね。

本田:お金は出していないけれど(笑)。

君島:世界に羽ばたくシェフたちを紹介し、今まで異ジャンルにいて接点のなかった料理人たちをつなげる。そのことで彼らの世界は広がっていく……。

中村:人的なネットワークを提供していますよね。若い料理人たちの垣根を取っ払って交流させている貢献度は高いと思います。

「ティルプス」大橋直誉さん。本田さん、大類さんともに彼の才能に期待を寄せる。
「星のや東京」の浜田統之シェフ(中央)と「Ode」をオープンさせてメディア露出が相次ぐ生井祐介シェフ(左)。「こうした会での人とのつながりは独立時の大きな力になると思う」と生井シェフ。

タブーの少ない「食」だから、シーンが過熱する

君島:レストランを評価する基準として、意識していることは何でしょうか?

本田:僕は評論家じゃないから、最も大事にしてるのは、彼らの哲学。レストランは何十年も続けるものなので、根底に確固とした哲学がないと伸びない。

大類:あえて言うなら、「人として面白いか」というのが絶対条件。DINING OUTでは、一定期間がっつり組んで仕事をしていくので、面白いやつだなと思わないと続かないんです。ありがたいことに、これまで一緒にやってきたシェフとはずっと続いています。「面白さ」はなかなか分析し切れないですね。僕がたまたま持っている問題意識と合うということもあるだろうし。愛媛・内子町のDINING OUTでは、大阪のレストラン「ラシーム」の高田雄介君と一緒にやったんですよ。彼は料理人としてもカメラマンとしてもDJとしても本格派で、たまたま料理人をやっていますという感じ。でも、その料理が、めちゃめちゃレベルが高い! そういうところに惹かれますね。

中村:大類さんの感覚はとても共感できます。僕はどこか、ちょっと変だな、クレイジーだなと感じさせる何かを求めているのかもしれません。ファッションとかアートでは表現し切れない、ちょっと変なものを見たいな、という気持ちがある。パリで活躍する元「クラウン・バー」の渥美創太君なんかも、ちょっと変なフレーバーを入れてきたりする。あれが楽しい。

元「クラウン・バー」の渥美創太シェフ。自身の店のオープンに向けて充電中。
「81」の永島健志シェフは2度目の参加。「活躍している方々と話ができて刺激的」

中村:「世界ベストレストラン50」の審査員を始めて5年目ですが、この5年で食のシーンは大きく変わりました。今、ファッションだとか、現代アート、建築などが発信していたトレンドを食のジャンルが引き受けているように感じます。食はタブーが少ないですからね。ファッションの世界だと自主規制がかかります。毛皮を使うのはNGとか。でも、食の世界ではジビエもOK。だから面白い人が食に集まってきているのは、すごくよくわかる。

君島:アート誌が相次いで食の特集を組んだり、アートの領域で活動していた人が食で表現を始めるケース、増えていますよね。

中村:かつてはファッションが食をリードしていたかもしれないけれど、この5年で逆転したように思う。ファッションでは表現し切れないからでしょうか。今は食がファッションやアートを牽引していると感じます。

君島:デジタル化が進むにつれ、アナログでプリミティブな感覚への欲求が高まるのは必然でしょう。食のシーンでも「発酵」や「熟成」がムーブメントになっています。人間の活動の中で、何が最もプリミティブかと考えると、「着る」ことや「創作する」よりもやっぱり「食べる」ことですよね。みなさんのお話を伺う中で、その最もプリミティブである「食」はいわば周回遅れで最先端を走っているのかなと感じました。本日はありがとうございました。

 

−参加者−(敬称略)

Maison Troisgros(Ouches)  Leo Troisgros

Bistro64(Rome)  Kotaro Noda

Clown Bar(Paris)  Sota Atsumi

傳 長谷川在祐

よろにく 桑原Vanne

Yoroniku  蕃 早川剛

天ぷらくすのき 楠忠師

日本料理たかむら 高村宏樹

鮨喜邑 木村康司

はっこく 佐藤博之

鳥しき 池川義輝

炭火焼肉 なかはら 中原健太郎

御料理宮坂 宮坂展央

しのはら 篠原武将

から木 唐木正文

ete 庄司夏子

Bvlgari Il Ristrante Luca Fantin

ラ・ブリアンツァ 奥野義幸

ペレグリーノ 高橋隼人

81 永島健志

Tacubo 田窪大祐

ロットチェント 樋口敬洋

星のや東京 浜田統之

Chiune 古田諭

Ode 生井祐介

リベルテ・ア・ターブル・ド・タケダ 武田健志

Kabi 安田翔平

東麻布天本 天本正通

アーククラブ迎賓館 RED35優勝 赤井顕治

鮨くろ崎 黒崎一希

遠藤のりひと

飯尾醸造 飯尾彰浩

黒木本店 黒木信作

平和酒造 山本典正

松本醸造 松本日出彦

Andi 大越基裕

World’s 50 Best Restaurants 中村孝則

Onestory代表 大類知樹

浜田岳文

岡田右京

青田泰明

渡部建

 

DJ 田中知之(FPM)

Drink Director 大橋直誉(TIRPSE)

Food Director 米澤文雄(ジャンジョルジュ東京)

Movie 富田直樹(Ninja Works)

AnDi 大越基裕

Producer 本田直之

Special Thanks TRUNK HOTEL  野尻佳孝、古賀久夫、小南綾

text by Reiko Kakimoto
photographs by Hide Urabe

2018/3/7

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