ヒト・コト・ミライが交差する
リアルプレイス │ エイチ

ト・ト・ミライが交差する
リアルプレイス │ エイチ

produced by amana

CASE

地域とシェフの出会いが導く、
食による地域資源の可視化

地方創生が叫ばれてひさしい昨今、さまざまなプレーヤーが地域の文化資源を掘り起こしてその価値を可視化する取り組みを進めています。以前エイチで取材した「D&DEPARTMENT PROJECT」代表のナガオカケメイさんやONE STORY代表の大類知樹さんが主導する地域活性化の先駆的なビジネスモデル(「地方活性のビジネスチャンスは『閉じた世界』にあり」)はその代表例と言えるでしょう。食のメディア「料理通信」も、地域に根ざした食文化や産業の魅力を伝えるユニークな事業を展開しています。その事例として、今回は姫路市をはじめとした播磨地域の8市8町が連携したブランディング事業「豊穣の国・はりま」に関する取り組みについてご紹介します。


「豊穣の国・はりま」は、姫路市とその近隣自治体8市8町が連携する地域ブランディング事業として2016年にスタートしました。播磨地域は、阪神(摂津)、丹波、但馬、淡路と並ぶ兵庫県の1エリア。播州とも呼ばれ、1300年前に編纂された『播磨国風土記』には、すでに多彩な風土と豊かな実りがたたえられています。

現在まで脈々と続く良質なものづくりを播磨地域ブランドとして認定し、農産物などの一次産品はもとより、皮革産業や伝統工芸も含めた地元産業のブランド価値や認知度を高めることを目的にした事業が「豊穣の国・はりま」です。

 

伝える、つなげる、創造するメディア

播磨地域は海の幸、山の幸、酒や醤油などの醸造品まで、食に関して「無いものはない」といって良いくらい豊かなリソースがあります。とはいえ、地域の産業のなかでも、伝統製法を受け継ぎ、品質にこだわり生産数も限られる産品は、作り手の姿勢や商品の個性を理解し寄り添える使い手(シェフ・流通・小売)、食べ手に、知ってもらう必要があります。

そこで料理通信は、まず播磨の良質な食のポテンシャルをオピニオンリーダー層に知ってもらうべく、小ロットでも質のよい生産物を買い支えてくれる食のプレーヤーにつなぎ、そこから一般生活者にも認知を広げていくという方向性を打ち出しました。

まず、2018年1月発売の『料理通信』2月号では、人気企画「食の文化遺産巡り」で播磨地域を取材。続く番外編で、東京の人気フレンチレストラン「L’AS(ラス)」の兼子大輔シェフが播磨を訪れた様子をリポートし、獲れたての食材を味わい、生産者と交流した模様は「The Cuisine Press」でも公開しました。

兼子シェフが訪れたのは、ぼうぜ鯖の養殖場や播磨灘網干の牡蠣養殖場、銘酒「龍力」の蔵元・本田商店や、「手柄山延寿本みりん」の川石本家。「どの生産者も播磨の風土に寄り添いながら新境地を開拓しようという気概にあふれている。播磨の食材が優れているのは、土地の力と人の力、その相乗効果によるのでしょうね」と兼子シェフ。播磨灘の豊富な海の幸、酒米の王・山田錦の故郷で醸される銘酒の数々、醤油、みりんなどの発酵調味料。日本の味覚を象徴する品々が高いレベルで勢ぞろいする播磨の魅力を、若手実力派シェフが高く評価します。

現地を訪れ播磨の魅力を体験する兼子シェフ

その後、記事の内容をリアル化した「MEETUP」を2018年2月に開催しました。会場は、兼子シェフが東京・青山に構えるレストラン「L’AS」。WEB料理通信「The Cuisine Press」のユーザーから抽選で約35名が参加。前年11月から現地を訪れて生産者たちと交流した兼子シェフが、播磨地域の食材を香り高いフランス料理へと仕立てていきました。

この日最初にサーブされたのは、創業155年の老舗・川石本家の「手柄山延寿 純米本みりん」で作る“みりんモヒート”。「L’AS」のソムリエ・常盤努さんが本みりんをレモン、ミント、炭酸で割った食前酒にアレンジしました。

続く1品目の料理「フォワグラのクリスピーサンド」でも、フォワグラを覆うキャラメルコーティングの部分に本みりんが活躍します。米のでんぷんが糖化熟成してキャラメリゼの味わいを持つみりんの成り立ちをひも解き、フレンチシェフとソムリエの視点で、独自の解釈を施して仕立てた2品。これには参加者も地元関係者も思わずうなりました。

メインには海の幸「ぼうぜ鯖」「ぼうぜがに」「白鷺鱧」という播磨灘の厳選ブランドがずらり。鯖は絶妙の火入れ加減で身の締まりを良くして、見た目も艶やかなテリーヌに。

次にサーブされたのは、ほんのり湯気に曇る大きなワイングラス。料理と同じ温度帯でよりなじむようにとの配慮から「龍力 特別純米 生酛仕込み」をぬる燗にしてワイングラスで提供するという粋な計らいに、会場が湧き立ちました。

気候風土に恵まれた播磨の豊かな土地柄が作り出した食材の数々が、一流シェフやソムリエとの出会いによって魅力溢れるフレンチへと生まれ変わりました。

取材と並行して、「豊穣の国・はりま」の食をブランディングするポスター用の撮影も行いました。クリエイティブディレクションはアマナのデザインチーム「ミサイルカンパニー」が担当。ポスターはMEETUPの会場でも披露されました。

全国各地に、特徴ある食文化が育まれている日本の魅力。伝統のなかにある本質的な価値に光を当て、現代や未来に活かすイノベーションを興していくことが、日本の豊かさを将来につないでいく上で大切ではないでしょうか。生産者とシェフ、食のクリエイター同士の化学反応によって生まれた新たな気付きを、食べ手とともに分かち合い共感の輪を広げる。「料理通信」が担う食のコミュニケーションは、料理通信がつなぐ作り手、使い手、食べ手、それぞれが自らの立ち位置を理解し、互いをリスペクトする関係値によって成り立っているのです。

LATEST EVENTS