ヒト・コト・ミライが交差する
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produced by amana

CASE

“生きた写真”で演出する
子どものための自然科学書

Nature & Science(以下、N&S)が手がける書籍は、大人から子どもまで幅広いニーズに合わせて制作されています。とくに子ども向けの書籍である写真絵本は、読者はもとより出版社からも評があります。アマナのストックフォト(アマナイメージズ)を活用した写真のクオリティが高い評価につながっているのですが、じつはそれだけではありません。そこには長年にわたる編集のノウハウ、本づくりの技術が活かされていました。


観察する楽しさに出会える教育ツールを目指して

難しい専門用語を使わずに、子どもたちに自然科学を学ぶ楽しさを知ってもらうことが目的の写真絵本。子どもが理解しやすいようなテキストに整理することも大事ですが、ビジュアルの見せ方も重要です。子ども向け書籍だからといって、雰囲気がファンシーな写真や単にきれいな写真を選ぶわけではありません。N&Sが編集する写真絵本では、科学的な視点から見てクオリティの高い写真、自然の美しさが伝わる写真を使用しています。例えば、動物や植物の生態や機能を充分に説明している写真を選び、組み合わせを工夫することでテーマを分かりやすく伝えます。

専門的な視点で選んだビジュアルと端的なテキストで、生き物の暮らしを分かりやすく紹介

自然科学を学ぶ書籍というと写真絵本のほかに図鑑がありますが、両者の役割には違いがあります。図鑑は種類と名前を覚えて楽しんだり、カテゴリの特質や関係性から気づきや学びを得られるツール。そのため数が重要で、網羅的に広く浅く情報を掲載する必要があります。一方、写真絵本の場合は、生き物の暮らし、生態、行動、ディティールが分かるような本であることが大切になってきます。生き物のユニークな能力やコミカルな動作、トリビアルな情報も含めて紹介することで、ひとつの種の理解を深めることができます。このようなナラティブなストーリ展開によって生き物の暮らしを詳しく紹介することは、図鑑ではなかなかできません。そこにこそ、絵本という形態ならではの強みがあるのです。

ジンベイザメの下にくっついているコバンザメの生態や隠れている理由を楽しめるテキストで伝えている(左ページ)

N&Sの写真絵本が伝えたいのは「観察することの楽しさ」です。ライオンやカブトムシといった主役級の生き物たちはかたちや大きさが魅力的ですが、いっけん地味な生き物たちもよくよく知っていくと愛らしくユニークな特徴を持っています。ある一定の時間、じっくりと生き物の暮らしを眺めるとたくさんのことが見えてきます。そして、より細かく観察していくことで「おもしろさ」に出会う。N&Sは写真絵本を通じて、そんな体験を子どもたちにしてほしいと願っています。

口のなかで子育てするのがユニークでかわいらしいイエローヘッド・ジョーフィッシュ

デジタル化に負けないビジュアルと書籍づくりへのこだわり

私たちが図鑑などで目にする生き物の写真は、その色やかたちを正確に伝えるために正面や側面から静的に撮られています。こうした写真に対して、生き物の動きを多角的にとらえた写真は意外と少ないです。生き物の動作や生態が生き生きと伝わる写真絵本をつくるには、多種多様な写真のストックとそこから最適なものを選び出す眼が必要になってきます。N&Sはアマナイメージズが所有する数多くのストックフォトを基盤に、ミンデン・ピクチャーズなど世界的なフォトエージェンシーのビジュアル素材も活用してコンテンツを制作しています。専門的な知識を持った編集者が直接フォトアーカイブにアクセスすることで、シチュエーションや用途に合った写真を的確に選ぶことができるのです。

メガヌウオが潜りながら餌を取る一連の動きや口の出っ張りを出した瞬間的な写真などで、リアルな生き物の行動を伝えている

写真絵本や図鑑という書籍の市況は特殊です。ベストセラーになることは稀ですが、極端にニーズが少なくなるということもありません。しかしそれは言い換えれば、「新しさ」を生み出す必要がない膠着した市場とも言えます。テクノロジーがこれほど発達した今日であれば、より革新的な教育ツールが現れても不思議ではなさそうですが、革新性よりも大切なことがあります。

こうした教材は自然という普遍的なテーマを扱った教材であるがゆえに、流行に左右される必要はありません。生き物の身体それ自体のデザイン性を強調したり、伝えたい情報だけを的確に読者に届けたりするためには、あえて「書籍」というオーソドックスなフォーマットを踏襲することも必要です。インターネットやデジタルデバイス化が進むなか、専門家による裏の取れた情報の取捨選択や、「ひとりで読む」「大人と一緒に読む」など役割に応じて編纂することは、本という形態にも一定のアドバンテージがあるのです。

インターネットが普及する以前、自然科学に関するビジュアルは付加価値の高いものでした。ネイチャーフォト専門の写真家が海外の僻地に赴き、何日もかけて撮影した写真が載った書籍はそれだけで見るべき価値を持ちました。しかし、インターネットが普及した現在では、そうした「すごい」写真と出会うことはもはや珍しいことではありません。しかし、そんな現在だからこそ、書籍をつくることそれ自体の重要性は高まっています。確かな知識に基づく、精度の高い情報を読者に提供すること。そのためには多くの専門家の協力と編集者の専門性が不可欠になってきます。N&Sが40年にわたって築いてきた多種多様な専門家とのコネクション、自然科学書づくりのノウハウは書籍の確かな付加価値を現代に伝えています。

Nature & Science編・武田正倫監修『もぐってかくれる』(金の星社、2017年) おもに学校・図書館書籍として、小学生たちに読書を楽しんでもらったり、調べ学習などに活用されたりしている。

引用書籍:『もぐってかくれる』、Nature & Science編・武田正倫監修(金の星社、2017年)

2018/9/5

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