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CASE

日本の若手写真家を世界のシーンへと押し上げる
――LUMIXとIMAが描くアートフォトの未来

水谷吉法、横田大輔、藤原聡志、濱田祐史、——―いまや世界が注目する日本の若手写真家たちです。無名だった彼らのキャリアの最初の時期に、世界のアートフォトシーンに進出するきっかけのひとつとなったのが、「LUMIX MEETS / BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS」。

シーンの最前線と切り結ぶLUMIXとIMA。企業によるアーティスト支援の中でも、国内ではユニークな取り組みの一例となっています。年を重ねるごとにプロジェクトが成熟し、5年目にして成果を実感できる域に突入してきました。その独創的な企業とアーティストの麗しき関係をお伝えしましょう。


「BEYOND2020」選出が世界への足がかりとなる

写真雑誌『IMA』の刊行をはじめ、アートフォトをとりまくさまざまなクリエイティブを提案してきたIMA 。グローバル化する写真界の現状を踏まえ、日本人若手写真家の海外進出をサポートするためにスタートしたのが「LUMIX MEETS / BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS」(以下、「BEYOND 2020」)です。

パナソニック株式会社 / LUMIX特別協賛のもと2013年に始まったこの展覧会を中心としたプロジェクトは、今年で5回目を迎えます。毎年IMA編集部により6人の写真家が選出され、そのうち3名がLUMIXでの新作を撮り下ろし(残りの3名は既存作品での参加)、グループ展の形式でパリ・アムステルダム・東京の3都市を巡回します。「パリフォト」や「Unseen Amsterdam」といった、世界屈指のフォトフェスティバルと同時期に各都市で開催することを主軸に置いてきました。

今年のアムステルダム・アンシーン会場の様子

これまで日本における若手写真家の支援といえば、キャノンが主催する「写真新世紀」やガーディアン・ガーデン主催の「1_WALL」、朝日新聞社による「木村伊兵衛賞」のようなコンペティションやアワード形式のものがまず思い出されます。それぞれに、これまで多くの写真家を輩出し、日本の写真業界の中では大きな役割を果たしてきたことは事実です。

また近年は「JAPAN PHOTO AWARD」など、より一般に開かれたWEB上でのコンペなども開催されるようになりました。しかし、こうした「若手写真家に賞を与える」タイプの支援とは異なり、一足飛びに海外での作品発表の機会を提供するところに「BEYOND 2020」の新しさがあります。

© Yosuke Yajima
© Yusuke Yamatani

毎年11月にパリで開催される「パリフォト」、そして同じく毎年9月にアムステルダムで開催される「Unseen Amsterdam」。前者は有名写真家・ギャラリーが集結する世界最大、最高峰のアートフォトフェアであり、後者はグローバルな視座で若手発掘と紹介に力を入れたフェアとして知られています。ふたつのアートフォトフェアと同時期に、同じ都市で展覧会を開催するところが、若手の実践的な支援と育成をめざす「BEYOND 2020」の最も意義深いポイントになっています。

そうすることで、作家たちは、キュレーターやギャラリスト、評論家、ジャーナリスト、研究者、出版社など、世界中から集まるプロの写真関係者やコレクターに自分の作品を見てもらう、またとないチャンスに恵まれると考えているからです。また、本展でコミッションワークを発表した写真家は、支援のもとで会期中に渡欧して現地に滞在できることになっています。日本の若い写真家は自分の作品をプレゼンテーションし、オーディエンスの反応を直接体感すると同時に、世界の写真シーンの中心を見聞する機会を得るわけです。作品制作から数えると半年以上の時間をかけながら、さまざまな出会いを経験していくことになるのです。

© Kenji Hirasawa
© Haruyuki Shirai

障壁を越えて、若い才能を世界の最前線へ

アート写真界の若手を取り巻く環境は厳しいという実情があります。コンペティションへの入賞やグループ展に参加できたとしても、制作・搬入出にかかる経費は作家負担であるのは当然のこと、ギャランティが支払われることなど稀でまして海外進出をめざす場合、言語や物理的距離、そして経済的な問題が障壁となって立ちはだかります。

そうしたなか、「BEYOND2020」に参加する6名には制作費や輸送費、ギャランティが準備され、うち3名はそれらに加えて渡航費もサポート。さらにLUMIXからの機材の貸与を受けながら、実験的な創作活動もできる本展のメリットは少なくないと考えています。本展の取り組みは、5回目を迎え、少なからぬ成果を上げ始めている実感があります。

企画の立ち上げ当初、日本の若手写真家と海外のアートフォトマーケットのあいだに既存の回路はわずかしかなく、まして無名の若い写真家たちを毎年世界に向けて紹介するなどという前例はないに等しかった。しかしそのようななかでも、継続的に事業を実践していくことで、写真家たちのキャリアの形成の一助となっています。

メイン画像
© Yoshinori Mizutani

BEYOND2020におけるIMAの最も重要な役割は、作家の選出(うち1枠はポートフォリオレビュー「STEP OUT!」を通して選ばれる)です。作品の善し悪しだけでなく、写真家たちとの対話のなかで「今後のキャリアの展望」などを確かめ、それらを総合的に評価することも重視しています。結果、選ばれた作家たちの多くは、本展を足がかりに自ら積極的に世界のフォトシーンへと進出し始めました。

たとえば、2013年、2014年に参加した水谷吉法は、本展への参加後、海外ギャラリーからのラブコールが相次ぎ、アントワープ、ロンドン、パリ、北京、ミラノで個展を開催。アート写真雑誌「Foam」でのTalent選出を皮切りに、フランス「La Gacilly」など世界各国のフォトフェア、フォトフェスティバルにも参加しています。また、『New York Times Magazine』からの撮影依頼や、今年アムステルダムのUnseenが主催するアワード「Meijburg Art Commission 2017」のファイナリストにノミネートされるなど活躍がめざましい作家の一人です。

横田大輔(2014年参加)は、世界的に権威のある「Foam Paul Huf Award 2016」を受賞するなど、いま最も注目される日本人若手写真家と言ってよいでしょう。藤原聡志(2015年参加)は、2016年ベルリンのオペラハウスからの要請を受け、キャンペーン広告のビジュアルを担当。ベルリン市内のさまざまな空間で、写真によるインスタレーションを発表しました。また今年はイタリア・ミラノで、プラダ財団による写真と視覚言語のアートスペース「オッセルヴァトリオ(Osservatorio)」での個展を開催しています。

© Daisuke Yokota
© Satoshi Fujiwara

アートフォトマーケットにおける日本人写真家への評価・関心は年々高まりを見せています。とくに近年は、80年代生まれ以降の若い写真家に注目がシフトしつつあります。彼らと世界のマーケットを出逢わせること、最先端のアートフォトシーンに一石を投じるような先鋭的な表現を紹介していくこと。「BEYOND2020」の取り組みが若手の活動の場や表現の多様性を拡大し、日本の写真表現をより豊かにするきっかけになることを目指し、今後も継続していきます。

リンク:「LUMIX MEETS / BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #5」

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