ヒト・コト・ミライが交差する
リアルプレイス │ エイチ

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produced by amana

REPORT

人と地球と、そして宇宙の未来のために
アイデアから起こすイノベーション

海抜の上昇問題や、大気汚染などの公害、宇宙廃棄物といった地球・宇宙規模の課題に対してクリエイティブの視点からアプローチを仕掛ける、オランダ人アーティストのダーン・ローズガールデさん。「ゴミは将来的になくせる」と信じる彼が挑む人間と地球、そして宇宙との新たな幸せなサイクルを生み出す、壮大なプロジェクトの全貌とは? 「NATURE & SCIENCE」創刊の特別企画第2弾となった大好評のトークイベントの模様をレポートします。(後援:駐日オランダ王国大使館)


伝統と新しさを融合させた「アップサイクル」

タジリケイスケ(「H」編集長/以下、タジリ):今日はオランダからダーン・ローズガールデさんにお越しいただいています。ダーンさんはこれまで、都市や環境をテーマに大規模なプロジェクトを手がけてこられ、昨年講演したTEDの動画が世界で100万回以上再生されるなど、今注目されるイノベーターでありアーティストでもあります。そんなダーンさんはこの10月から宇宙廃棄物に大きな関心を持って取り組み始めており、今日は最新の取り組みについてお聞かせいただければと思います。

ダーン・ローズガールデ(以下、ローズガールデ):こんばんは。ご来場、ありがとうございます。この場で未来のランドスケープを皆様と共有できることを、嬉しく思っています。いままで私がやってきたプロジェクトを説明した後で、最近取り組んでいるプロジェクトの秘密をお伝えさせていただきます。

オランダ人アーティスト・イノベーターのダーン・ローズガールデさん

まず私が住むオランダで行ったプロジェクトからご説明します。オランダというのは、ほとんどの地域が海抜0メートル以下で、テクノロジーなしには生き残れません。この写真はアフシュライトダイク(編注:「締め切り大堤防」という意味の、オランダ北部にある世界最大の堤防)です。左側が海、右側がダムの水を貯める湖で、アムステルダムはその先にあります。

©︎studio roosegaarde

こういった状況のなか、われわれオランダ人は、水と闘い、水と共存し、調和を保てるよう努力し続けています。そういった背景からつくった作品が「水の光」です。LEDとレンズを使って、地球の環境がこのまま進めば海抜がどれだけ上がるかを可視化するプロジェクトです。

参加者のなかには、洪水の体験から恐怖を覚えた人や、ある種のインスピレーションを得た人、感動した人もいました。これが力強いデザインがもたらす効果であり、集団としての経験から、われわれの未来をどのように考えていくかきっかけになるものです。

アフシュライトダイクは、建設から年月が経ってリノベーションが必要になり国から依頼を受けました。ダムの長さは32kmもあり、予算は8億2300万ユーロ(約1050億円)という巨額なものでした。ダム自体の補強と洪水対策の目的もありますが、文化的価値をどのように受け継いでいくかがポイントでした。われわれオランダ人にとって、アフシュライトダイクは誰もが知っている万里の長城のような歴史的な建造物だからです。

アフシュライトダイクの上にある建築物は1932年に造られたもので、その姿は禅的で、プレーンで非常に美しい。世界を代表するオランダ人建築家、レム・コールハースの祖父であるディルク・ローゼンブルフが手がけたもので、地球上にある最も美しい場所のひとつだと思います。だからここに何か足すのではなく、既に存在するものだけで何かできないかなと考えました。しかし塩水・雨・風にさらされ続けて傷み、外観も悪くなってしました。そこで私は、光とテクノロジー、知的なものを用いて何かしようと思いました。しかし、LEDやソフトウェアはこの環境では耐えられない。そこで、「すでにある光」を使ってリノベーションすることにしました。

その光とは、「車のライト」です。光を反射する蝶の羽にインスピレーションを得て、ハイウェイを走る車のライトに反射して建築物に塗った反射塗料が光る設計にしようと考えつきました。それから建物物や水門の設計をし、実際に模型をつくったのがこの写真です。

©︎studio roosegaarde

両側にライトを付けた眼鏡、これが車のヘッドライトのイメージです。この眼鏡をかけて模型を見ている女性が、オランダで当時インフラを担当していたメラニ・シュリッツ・ファン・ヘゲン大臣です。

©︎studio roosegaarde

これが3年後に完成したときの写真です。まるで寺院のようですが、夜になるとこのように、車のヘッドライトの反射で建物が光るようになりました。まるで照明のような明るさですが、これは反射による発光でケーブル不要ですし電気代もかかりません。

©︎studio roosegaarde

建物に使われた、反射塗料の素材「レトロリフレクティブ・プリズム」も他社との共同で独自に開発しました。

拡大鏡で覗いたレトロリフレクティブ・プリズム ©︎studio roosegaarde

このプロジェクトは、伝統と未来的な要素が融合した良い例だと考えています。誰もいないのに街灯が一晩中ついているのはスマートではありません。だから既にあるものを「リサイクル」ではなく、「アップサイクル」していくことが大切なのです。

 

ゴッホとグリーンエナジーの掛け合わせ

ローズガールデ:次は、子どものころ良く見たような、蓄光して発光するシールから発想を得て、より長く光を保てるものがつくれないかと考えました。それとほぼ同時期に、オランダのゴッホ財団から、「ゴッホの生誕150周年を祝うにあたり、ゴッホをイメージした場をつくれないか」という依頼を受けました。そこで、ゴッホとこの発光物をつなげることを考えてみたのです。

その結果できたのが、この自転車の小道です。日中、光を貯めてくれて夜になると光る。

ゴッホは実際、1800年~1803年にこの近辺に住んでいたんですよ。未来に活かせるグリーンエナジーとゴッホをうまくつなぎ合わせることができました。ちなみに、京都の禅寺からもインスピレーションを受けています。

©︎studio roosegaarde
©︎studio roosegaarde

さらにこれと同じ考え方を高速道路にも応用しました。日中、光を貯めて夜になると8時間発光するガードレールです。オランダでは、車の接近を察知して照明が自動点灯する道路や、風力発電を利用した電灯など、未来に向けてエコな対策が活発に行われており、私の作品もこのような社会的取り組みの一環でチャンスをいただけています。

その一例が、北京の大気汚染問題です。厚いスモッグに覆われた北京で衝撃を受けたことをきっかけに、掃除機のようにPM2.5や光化学スモッグを吸い上げ、空気をきれいにする装置ができないかと4年程前にひらめいて制作したのが、「スモッグ・フリー・タワー」でした。

©︎studio roosegaarde

これは1時間に3万立方メートルの空気を吸い上げてくれます。サッカースタジアムくらいの広さであれば1日で処理でき、PM2.5も除去してくれます。これを公園などに設置したところ、20〜70%もの大気汚染が改善されました。私は空気をきれいにすることをミッションのひとつとしていて、今後は徐々に広げていく予定です。実際に、メキシコ、コロンビア、インド、オランダ、ポーランドからも導入依頼をいただいています。

この写真は私の一番のお気に入りの一枚です。ここに犬がいますね。初めて訪れたとき、空気清浄機の周りに犬がいっぱい集まるのはなぜだろうと思いました。そこで分かったのが、犬の嗅覚は人間よりはるかに鋭いから、より光化学スモッグに苦しんでいたんだろうなということ。だから飼い主のそばから離れて、何キロも向こうからやって来て、ここに群れているんだろうなと。この犬なんか楽しそうですよね。しっぽが立っていますから(笑)。

 

ゴミをジュエリーに変える、新しい経済

ローズガールデ:われわれ以外の自然や生物は、上手に生態を循環させながら生きています。だとしたら、なぜわれわれにそれができないのでしょうか? そこで、中国の光化学スモッグを集めたダスト、埃の塊を別のものにうまく循環させることができないかと考えてできたのが、このリングです。

会場の来場者席に回された、ローズガールデさんのアイデアでつくられたリング

光化学スモッグの塵の42%はカーボン(炭素)です。このカーボンを圧縮すると何ができるか、そう、ダイヤモンドですよね。30分間圧縮すると、このようにダイヤモンドができる。だからこのダイヤのリングを買っていただくことで、1000立方メートルの空気をきれいにするための寄付になるのです。

これはもともとクラウドファウンディングのためのサイト、Kickstarter(キックスターター)で資金を集めました。結婚指輪として買う人も現れて、写真のカップルは役者のやらせではなく、本当に買ってくれた人たちです(笑)。この指輪を使って結婚に至ったカップルも出てきています。また、チャールズ皇太子のカフスリングにもなっています。

©︎studio roosegaarde

これは、ゴミから新しいものをつくる新しい経済の形です。私たちが信じているのは、ゴミ、不要なものは将来的になくなるということです。誰かにとって不要なものは誰かにとってのご飯になるというのが、自然にとってのサイクルであるからです。また、科学やテクノロジーと同じようにデザインとクリエイティブであることも重要です。そのことよってユーザが、より愛着を持ってくれますから。

 

宇宙課題への挑戦

ローズガールデ:そしていま、私が興味を持っているのは宇宙に関することです。きれいな空気、水、エネルギーに加え、きれいな宇宙を考えていきたいのです。

これは私が「スペース・ウェイスト」と呼ぶ宇宙廃棄物です。現在8100万トンの宇宙廃棄物が存在します。宇宙開発は米ソによって1957年から始まりましたが、打ち上げられたロケットや衛星などの部品が壊れ、破片が地球の表面に廃棄物の層をつくっています。ただ皮肉にも、この写真にはちょっとした美しさがありますよね。

©︎studio roosegaarde

私たちは、なぜこの問題を気にしなければならないのでしょうか。

それは、宇宙廃棄物の飛ぶスピードは時速2万5000キロにもなり、小さい破片が人工衛星にぶつかると衛星を破壊し、GPS機能や通信・通話機能に支障をきたす可能性があるからです。ESA(欧州宇宙機関)が今後ますます宇宙廃棄物の問題が悪化すると予測しているように、地球の周りの廃棄物の層はどんどん厚くなっています。

それが、私が今夜ここにいる理由です。つまり、このプロジェクトのフェーズ1は現状の可視化です。

これは「スペース・ウェイスト・ラボ」のプロジェクトの一環です。200キロの上空で宇宙廃棄物がどのように動いているのかをスキャンするようにリアルタイムでトラッキングし、光線で可視化しています。いまは約2万9000個の廃棄物をトラッキングしていて、リアルタイムで状況が分かります。

©︎studio roosegaarde

このラボは先週オープニングを迎え、8000人の参加がありました。人々にそこにある問題を認識させ、啓蒙するためにもフェーズ1は非常に大事です。人々が興味を持たなければ次に移れないからですから。

 

2019年の1月から始まるフェーズ2は、問題の解決です。ESA、NASA(アメリカ航空宇宙局)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)も宇宙廃棄物の問題を検討していますが、実は具体的な解決策は出てきていません。ネット網、レーザー、ロボットアームなどの案はあっても、具体的ではありません。なぜなら、誰もそのコストを負いたくないから。そして、きれいにする必要性を感じないからです。ですがそれでは、子どもと同じです。子どもは遊びたい。アイスクリームも食べたい。でも散らかった部屋を片付けるのは嫌。それと同じことなのです。

そこでわれわれが考えているのが、宇宙科学者と一緒になって宇宙廃棄物に新しい意味を与えることです。宇宙廃棄物を何か新しいことへのインプットだと考え、「アップサイクル」していく。例えば「8100万トンの廃棄物」ではなく、「素材」として、3Dプリンタで出力し、月の居住空間をつくることができないだろうか? あるいは、花火をつくって環境を汚すのではなく、人工の流れ星をつくって宇宙廃棄物をきれいにできないか? そういうことを考えています。

みなさまの協力を得て、空気のきれいな、水のきれいな、宇宙のきれいな環境を手に入れることができればと考えています。ご静聴ありがとうございました。

[ 質疑応答 ]

新たなアイデアを世の中に生み出すイマジネーション

神吉弘邦(「NATURE & SCIENCE」編集長/以下、神吉):ありがとうございました。私たちのWebメディア「NATURE & SCIENCE」の創刊特集「宇宙へのまなざし」で、先週から掲載されているダーンさんへのインタビュー「創造性で宇宙廃棄物に挑め」で、「誰もが最初はアマチュアなんだ」という言葉がすごく印象的でした。宇宙廃棄物の問題をゼロから始めるにあたって、どうやってここまでの知識や実行力を身に付けてきたのかを、聞かせて下さい。

「NATURE & SCIENCE」編集長の神吉弘邦(左)と、「H」編集長のタジリケイスケ

ローズガールデ:私自身はESAやNASAで働いている方たちより頭が良いとは思っていません。私ができることは、海抜の上昇や宇宙廃棄物の問題を別の観点から、何か新しいものをつくり出せないかを考えていくことです。先ほどお見せしたダイヤモンドの指輪は、もう公害ではありません。それが私にとってのデザインです。椅子やテーブルではなく、新しい解決策やデザインなのです。

「いまの世のなかに、何が足りないか?」というイマジネーションが重要だと感じています。ご紹介したプロジェクトを見ていただくことで、新しいイマジネーションが喚起されることを期待しています。

神吉:イマジネーションについてダーンさんはすごく厳しいと伺っていて、オフィスに電気椅子があるとか……これは内緒ですか(笑)?

ローズガールデ:よくご存じですね(笑)。私は「Yes, but(はい、でも……)」という口ぐせがある人に問題があると思います。何か新しいアイデアを提示すると、「Yes, but」と言う人がいますよね。いいアイデアだけれど高すぎる、安すぎる、きれいすぎる、汚すぎる、速すぎる、遅すぎる……と、いろいろな理由を付けて新しいアイデアを受け入れてくれないわけです。

そこで「Yes, but」と言わせないためにの椅子をデザインしました。見た目は普通の椅子ですが、音声認識機能が付いていて座っている人が「Yes, but」と言った瞬間ピリッとお尻に電気ショックが走るんです(笑)。もちろん身体的なダメージを与えるわけではなく、ちょっと痺れる程度です。それによって新しいアイデアに対して好奇心を持ち続けることになります。

左は通訳の池田哲氏

神吉:オランダ人気質を示すようなユーモアにあふれていますね(笑)。ある意味ジョークですが、クリエイティブな発想を生むためには非常に重要なポイントだと思います。

ローズガールデ:私自身やりたいことに対しては非常に真剣に向き合っていますが、その一方で自分自身をあまり真剣に扱い過ぎないようにしています。こういったプロジェクトをやっていくうえで、ユーモアやポジティブであることは非常に大切だと思います。非常に複雑なプロジェクトで予算の規模も大きいため、多くの人数が関わっていますから、人間関係の潤滑油になるユーモアは大切だと思います。

 

ローズガールデのインスピレーションの原点

質問者1:(環境汚染や地球を壊していることに対して)人々が「問題がある」と認識しているにもかかわらず、その問題を忘れていってしまう。それはなぜなのでしょうか?

ローズガールデ:非常にいい質問ですね。ありがとうございます。われわれは分からないことに混乱し、恐れを抱いてしまうからです。だから自分の家や周りの環境を考えるだけで手いっぱいになり、大きい問題は分からないので恐れてしまうのです。

そういった状況に対しては、集団としてみんなで経験し、みんなで考えることが大事です。将来がどうなるのかは誰も分かりません。ただ、「分からない」という状態にとどまるのではなく、今後どうなりたいかのビジョンを持たないと、今の状態にいるだけになってしまいます。私は「宇宙」というのは非常におもしろいビジョンだと思っていて、そこに挑戦していこうと思います。

質問者2:宇宙廃棄物プロジェクトの第2フェーズについてもう少し詳しく教えてください。また、空気清浄や宇宙廃棄物の問題解決など、そういった発想はどう得ているのでしょうか?

ローズガールデ:ふたつ目の質問から回答すると、私のインスピレーションの原点は“イラつき”です。例えば外を見たときに、渋滞はあるし、公害はあるし、海抜は上がってきているし、空気は汚れている。そうした状況に対する解決策として何かをつくり出し、自分が理解できる世界に変えようとしているのです。

最初の質問の第2フェーズに関してですが、宇宙廃棄物に対しては最終的には規制をかけることになると思います。宇宙にロケットを打ち上げた人が、出た廃棄物を回収するなり何かしら対策が課されるようなルールができることになるでしょう。ただそれを実施するには向こう25~30年はかかると思います。

ドナルド・ケスラーという非常に有名な宇宙の専門家は、向こう30年で宇宙廃棄物によってロケットを打ち上げられなくなるだろうと言っています。もし30年後に、知的生命体を宇宙のどこかで発見しても、「宇宙廃棄物が原因で行くことができません」というのは私の孫にしたい話ではありません。だから、いま何か手を打たなければいけないと思います。

フェーズ1で人々を啓蒙し、フェーズ2で何かしらの方法で宇宙廃棄物に対処していく。それに加え、先ほどご紹介した人工流れ星をつくるなど、宇宙廃棄物に新しい価値を与える仕掛けをつくろうとしています。これは、決して夢を見ているわけではなく、非常に現実的な解決法だと思っています。

ただこれは私だけではなく、みんなで考えていく方向にもっていきたいです。なぜなら私は宇宙に関する専門家ではなくデザイナーなので、いろんなクラスターの人が知恵を出し合って、その一員として私がいることが理想です。

みなさんも経験したことがあると思いますが、何か新しいイノベーションをやろうとしているときに、「無理だよね」と他の人に言われることがあると思います。そして終わった後に多くの人によくこう言われます。「いいアイデアだよね。何でもっと早くやらなかったの?」と(笑)。

新しいアイデアに対して人々が慣れるのには時間がかかりますが、これ自体、イノベーションのプロセスの一部だと思っています。例えばラディカルな新しいアイデアをひらめいたとして、大勢に向かってそのアイデアを説明したとき、みんなが「いいアイデアだね」と合意してくれるのなら、それはラディカルなアイデアではありません。

私は、アイデアを理解してもらうためのぶつかり合いや対話も、プロセスの一部として考えています。「それは不可能だ」と言ってくる人たちを納得させること。不可能だと言ったことを間違いだと証明することが、クリエイティブなアイデアを出した人の役割だと考えています。考え方自体はシンプルで、われわれ人間が問題をつくり出したのであれば、それを解決するのもわれわれ自身であるべきだということです。

タジリ:ダーンさんのように、デザイナー、アーティストとしてプロジェクト、社会の問題解決に取り組んでいる強み、力を発揮できるところは何でしょうか?

ローズガールデ:私自身は、自分をアーティストだと考えていて、建築で大学院も出ました。父は数学者です。自分自身を定義していくというよりも探求していく方に興味があって、こういったプロジェクトをやっていくときには、詩的というかアーティスティックな考え方が必要になると思います。

もちろんそれだけではなく、実用的にやっていくことも非常に重要です。アーティスティックな部分と実用的な部分をつないでいくこと。それはアイデアとアイデアをつないでいくだけではなく、人と人とをつないでいくことです。プロジェクトには良いチームメンバーが必要で、極端に言うと、そのメンバーをひとつの部屋に放り込んで、「プロトタイプ(試作品)ができるまでは、部屋を出るな」ということなんです(笑)。

アート的な部分とビジネス寄りの部分、サイエンスをつないでいくのが、私の仕事になっていると思います。私の会社だけではなく、他の会社にも共通することだと思うのですが、大切なのは「お金中心」ではなく、「アイデア中心」に考えることです。アイデアを中心に置けば、そのアイデアがどこに行けばいいのかを導いてくれます。われわれはそれを追っていくだけ。それで失敗も含めて新しく何かを学ぶことになります。

アイデアを中心にやっていくことが良い起業家、デザイナー、サイエンティストであって、一般に「良い」と言われている人に共通する部分だと思います。

講演の終了後は、オランダにちなんだスナックを楽しみながら、ローズガールデ氏を囲んだ懇親会を開催。宇宙やイノベーションに関心のある人々の語らいの場となった
オランダで400年以上の歴史を持つビール「グロールシュ プレミアムラガー」も振る舞われた(協賛:グロールシュ)。中央のチーズは、オランダ人宇宙飛行士のアンドレ・カイパース氏が国際宇宙ステーション(ISS)に運んだ好物「オールド・アムステルダム」

タジリ:最後に、ダーンさんはこれまで各国の企業とコラボレーションをしていますが、日本企業には何を期待されていますか?

ローズガールデ:私の日本人への印象は、日本人は未来を考えることに恐れを抱いておらず、好奇心を持って考えているということです。また、技術を分かりやすく、フレンドリーなものと捉え、第二言語的のような感覚で扱っていると感じます。この日本人のクラフトマン的な気質を、私の新しいビジョンや、きれいな空気や水、宇宙空間をつくるためにつなげていければと思います。今日はありがとうございました。

Photographs by Kazuma Hata
Text by Masahiro Yoshikawa

2018/11/19

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