ヒト・コト・ミライが交差する
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produced by amana

REPORT

地方活性のビジネスチャンスは「閉じた世界」にあり

地方を舞台にしたビジネスが増加する昨今。D&DEPARTMENT PROJECT代表のナガオカケンメイさんとONE STORY代表の大類知樹さんは、そのなかでもひときわ異彩を放つ活動を続けられています。「地場に根ざした食文化や産業の魅力を再発見する」というコンセプトのもとで活動するおふたりに、ご自身の経験について語っていただきました。


 

君島佐和子(『料理通信』主幹/以下、君島)みなさん今日はお集まりいただきありがとうございます。ナガオカケンメイさん、大類知樹さんに「地方創生は誰のため? 日本活性化のいまとこれから」というテーマでお話をお伺いしていこうと思います。まずナガオカさんからご自身の活動についてプレゼンテーションをお願いいたします。

 

地域に根ざしたものを再評価する

ナガオカケンメイ(以下、ナガオカ):僕は「デザインしないデザイナー」と呼ばれています。「デザインをしない」というのは、世の中にすでにあるもので何かを作るという意味です。自分自身に新しいものを生み出す才能がないって割り切っている反面、新しいものをデザインするのも好きなんですよね。それで、どうしたら業界に居続けられるかなと考えていたときに、すでに世の中にある素晴らしいものを再評価したり、形を変えたりするような仕事をやっていけばいいのではないかと思いつきました。

2009年に『d design travel』というトラベルガイドブックを創刊しました。47都道府県に一冊ずつつくり、その土地らしいことや、そこに住む人たちの大切なメッセージを伝えることを目的にしています。物流や交通が速くなっていくと、その都市に行く価値がますます問われます。つまり、その都市「らしさ」がないと、そこに行く価値が当然なくなっていく。だから、「らしさ」を知ってもらう必要があるなということで、トラベルガイドという媒体を通してみなさんに伝えているわけです。

47都道府県、一つひとつを丹念にリサーチした『d design travel』各誌

他にも国内外の「D&DEPARTMENT」というショップを拠点に「d47 MUSEUM」という物産美術館や、「d47食堂」という地方の食を提供する飲食店などを通して、息の長い、その土地らしさを紹介しています。『d design travel』をつくる過程で膨大な情報をリサーチしたので、最近はそれに基づいたホテルを作りたいと思っています。

僕は自分のものを選ぶとき、ある基準に従うことにしています。端的にいうと「地域に紐づいていないものは応援しない」というものです。例えば、ある産地にすごく売れている陶芸作家がいるとします。その作家の商品だけを選ぶと、やはりその作家だけが頭抜けて売れてしまって、結果的に産地は疲弊するということが起こります。というか、すでに起こっているんです。なので、その作家さんが産地に紐づいていなかったり、地場に根ざしていなかったりしたら応援しないというルールを決めています。ひとまずこのあたりで。

君島:では、続いて大類さんお願いします。

大類知樹(以下、大類):はじめまして。ONESTORYの大類と言います。僕らの会社は「日本に眠る楽しみをもっと」というコンセプトを掲げています。ケンメイさんの活動とも共通するところなんですが、僕らも新しいことをやるわけじゃないんですよね。すでにそこにあるものを使って、あるいはその資産を発掘して磨き上げて、現代における「食×地域×文化」のストーリーとして紡いでいくっていうことをやっています。要するに、日本の地域を再価値化するコンテンツを作っている集団だということです。

僕らは「つながりたい人たち」っていうのをかなり明確に定義していて、「カルチュラル・クリエイティブズ」と呼んでいます。僕らのリサーチだと、その層は日本国内に1.4%くらいしかいません。この人たちに向けて、メディア、イベント、プロダクトなど、我々のすべてのアウトプットは設計されています。彼らに共通する特徴をいくつか挙げてみましょう。

 

・「旬」や「瞬」を大切にしている

・世界中を旅してるけど、日本を深く愛している

・ステータスよりも、ストーリーが大事だと思っている

・「得」ではなく、「徳」を重視したい

・日々の行動を通じてで世界に貢献したい

・食にこだわって、食から豊かさを感じたい

・流行よりも、自分らしいセンスを磨きたい

・共感や触発が、人のつながりを強くする

・生涯、学び続けたい。

 

こんな意識を持った人たちが日本に1.4%ですよね。それで、この人たちに向けたコンテンツの代表格が、日本のどこかに数日だけオープンするプレミアムな野外レストランの「DINING OUT」です。僕らは全てここからスタートしました。しかし、その目的はあくまで、食を通じて地域に根ざした自然・文化・歴史などを再発掘、再編集して、世の中に効果的に発信することなんですよね。地方の新しい表現フォーマットを探そうということで行き着いたのが、野外レストランというかたちでした。

北海道ニセコで開催された一夜限りの野外レストラン「DINING OUT NISEKO」のようす

時代の変化に呼応するビジネス

君島:おふたりとも、向き合っているものは日本各地に根ざす人だったり、文化だったりという点は共通していますよね。ナガオカさんがD&DEPARTMENT PROJECTをスタートされたのは2000年ですから、もう17年も日本の地域と向き合ってこられたわけです。当時から現在に至る変化をどのように捉えていらっしゃいますか?

ナガオカ:大類さんの活動との共通点は多いですね。ただ、ひとつ大きな違いがあるとすれば、それは僕の活動が「不満」というある種ネガティブな動機からスタートしていることだと思います。つまり、いちグラフィックデザイナーが抱いたデザイン業界への不満が出発点なんですよ。そこから、業界の常識をいったん脇に置いて、自分が美しいと思うものもの、気になるものを探求しはじめました。「グッドデザイン賞をとったけど、そのあとどうなっちゃったのかな?」という流行に淘汰されてしまった良いデザインを追っていった結果、「ロングライフデザイン」というキーワードを授かったというか。

そう気づけたのは、2010年くらいなんですよね。はじまりは本当に単純で。デザインが好きすぎるデザイナーが、好きすぎるがゆえにデザイン業界に腹を立ててどんどん別方向に進んでいったというだけだった(笑)。ビジネスとして成り立つかとか一切考えず自然にやってきたら、結果的に大類さんたちのフィールドに寄っていったという感じですね。つまり、その土地の個性とか「らしさ」みたいなものが、すごく大きなキーワードだと気づいたわけです。

 

 

ナガオカさんが古き良きデザインを見直すきっかけになった、カリモク家具の「Kチェア」

君島:最近、D&DEPARTMENT的なものがすごく増えているような気がするんです。それが後追いだとか、マネだとか言いたいわけではありません。そうではなく、日本の各地の人々、特に若い人がそういう嗜好を持ちはじめている証拠なんじゃないかなって思うんです。そのあたりはどうお考えですか?

ナガオカ:まさに「デザイン」という言葉の意味が時代によって変化してきたように、地方や地域というものの意味も変化してきたってことだと思います。田舎臭かったり、方言があったり、その土地にしかない独自性があればあるほど価値になる。それこそ差別化や独創性という意味において「デザイン」だって。

君島:大類さんは、なぜDINING OUTをはじめようと思われたんですか?

大類:僕はもともと広告を作っていた人間なんですよ。広告作りって「いいとこ探し」なんですよね。その企業だったり、サービスだったりのいいところを探して、それを世の中とポジティブに関係づけていくっていうような仕事が広告作りだって理解しています。

DINING OUTはつまるところ、地域のいいところを探そうっていう発想からはじまっているんですよね。DINING OUTをはじめたのが2012年なのですが、その当時地域から発信される情報はすごく質が悪かった。かっこ悪いというか、ずれているというか。「もっといいところがいっぱいあるでしょう」って。それは広告マンのDNAがそう思わせたんでしょうね。

そして同時期に、LCCが日本でサービスをはじめました。これは移動の革命だと思いました。これを機に船もLCC化するだろうし、タクシーも安くなるだろうし、移動にかかるコストがどんどん安くなっていく。そうすると、今まで行きづらかった地域に人が流れていくんじゃないかと思って。さらにグローバル化とデジタル化という大きな流れがあって、全世界的なレベルで情報が均質化していくなかで、付加価値の高い情報が求められていく。なにより僕自身が、そういう世界の均質化に抵抗したいと強く思っていました。だからDINING OUTをはじめて、自ら質の高い地域情報を発信していこうと考えたわけです。

「中里太郎衛門窯」でDINING OUTのためだけに製作された蓋物の唐津焼

相手が泣いてしまうほど感動させたい

君島:ナガオカさんは『d design travel』を作るとき、2ヶ月くらい現地に滞在していらっしゃいますよね。そのときってどんな感覚なんでしょうか?

ナガオカ:その土地らしさがわかるのって、2ヶ月のうち後半の1ヶ月間なんですよ。それまでは何もわからない。いろいろなところで食べたり飲んだり、ケガして病院に行ったり、洗濯物をクリーニングに出したり。そうやって暮らすように過ごしているうちに、そこに住んでいる人たちを通じて、なんとなく理解できてくる感じです。簡単にいうと、県民性みたいなものって本当にあるんですよ。そうやって土地の個性が明確にわかってくる。だから、最初の1ヶ月はとにかく感じることに集中する。土地を観察するという点においては、大類さんたちも一緒なんじゃないでしょうか。

しかし、こういうことってビジネスに結びつきにくいんですよね。でもなんとかして、その土地を感じる状況を作りつつ、ビジネスとしても成立させたいとは思っています。いまはそこにすごく感心があるし、それが大きなテーマでもあります。

君島:大類さんの場合、ミッションとしてビジネス化しなくてはならない部分もあると思います。そのあたりどう思われますか?

大類:最初は「ここに大きなビジネスがあるんじゃないか」と思ってDINING OUTをはじめたのですが、なかなかすぐにはビジネスになっていかない(笑)。でも、たぶん儲かるのはこれからかも知れないですね。DINING OUTは2日限定の野外レストランなわけですが、準備には半年を費やします。つまり、めちゃくちゃ効率が悪いんです。

新潟県・佐渡の有形民俗文化財「茅葺屋根の能舞台」。DINING OUTのためだけに披露された薪能を鑑賞しながら、この日限りの特別なディナーが提供された

しかし、その代わりそこに来てくれるお客さんの感度ってものすごく高いんですよ。その人たちを泣いちゃうくらい感動させることができるかどうかっていうのが僕らの勝負どころなんですよね。

強烈に印象づけるというか、「人生で最高の感動体験でした」くらいに言わせられるかどうかっていうところに勝負をかけていくと、結果的に効率が悪くなっていく。ビジネスとは一見かけ離れていってしまうのですが、もうちょっと長期スパンで見ると、あながち単なる非効率ではないと思うんですよ。深く、狭く、濃くアプローチすると、リーチは狭いかもしれないけど、そのお客さんたちと地域のあいだに、特別な関係性が生まれてきます。その関係性が続いていけば、今までと全く違う次元のビジネスチャネルになるんじゃないかなと思っているんですよ。

 

「あの人に届けたい」というビジネスマインド

ナガオカ:そうですね。僕は最近、京都の商売のしかたにすごく影響を受けているんです。つまり、その人のために「あつらえる」精神ですね。大類さんがやっていることは、ターゲットこそ設定しているけれど、実際はものすごく名前を持った個人を意識しているじゃないですか。大類さんと一個人の関係性で、このDINING OUTは成り立っているんだなと思いましたね。

大類:大概そうですね。何かしようと思ったときは、必ず特定の誰かの顔を思い浮かべています。その土地に入ってテーマを決めてっていうあたりから、これで誰を喜ばせようって。あいつはここに来て感動するかな、どういうふうに驚くだろうか、そういうことばっかり想像しながらやっていますね。

1.4%のカルチュラル・クリエイティブズがターゲットだと言いましたけど、プランニング段階に入ると特定の1人をイメージしている。その人が泣くほど感動すれば、ほかに来たお客さんもみんな感動すると思うんですよね。

メディアがデジタル化すると情報は拡散するんだけど、本質的なことは果たして伝わるのか疑問があるんです。本質的なことは結局、個人と個人の関係性のなかでしか伝わっていかないんじゃないかって。非効率で、前時代的かもしれないけど、逆にデジタル時代には強みになると考えています。

 

ゆるやかな観光、閉鎖的なビジネス

君島:ナガオカさんは最近、「シェアトラベル」というツアーのプランを手がけていらっしゃいますよね?

ナガオカ:ツアーといえば観光バスとか観光ホテルを利用した、いわゆる大型観光がこれまでの主流のフォーマットでした。しかし、残念ながらその時代は終わりつつあります。これからは「観光バスが入っていけないところ」にどうやって入っていくかが質の分かれ目になってくると思います。

 

少人数でツアーを組んで各地をめぐる、新しい観光ビジネス

ある場所に根ざしてものづくりをしている人たちは、なるべく知らない人と接触したくない。しかし、そういう人たちを紹介していかないと、日本の底力は強くなっていかないって思うんです。僕らのトラベルガイドでやっていることは、ある土地の生活者と土地の外から来た人のあいだに関係性を作ることです。

とはいえ、残念ながらはじまったばかりなので、まだビジネスと呼べるものにはなっていませんが。ゆくゆくは「クローズした観光」のあり方をもっと具体的に示していきたいですね。乗合バスで多くて8人とかの、「閉じた観光」のスタイルです。

おいしい地元のお蕎麦屋さんに50人とかで行っても、団体というくくりで2階の大広間とか、風情のない団体専用の部屋に通されたりしますよね。これがもし8人とか6人だったら、いちばんいいカウンターに座らせてもらうことができるかもしれない。あるいは僕らが2ヶ月ほどで築いた関係性があるから、多少融通を利かせてくれるかもしれない。そういうことを、いまテスト的にやっています。

大類:僕らもそもそもお客さんを限定しているのですが、実はもっと限定したいなと思っているんです。ビジネスとのバランスみたいなものはありますけど、会員制にしてクローズドにして絆を強めたほうが、結果的に全員幸せになるんじゃないかなと。

ナガオカ:マスを相手にする観光の時代は終わって、これからは「どういう観光客に来てもらいたいか」ということを考える時代だと思いますね。観光地だけじゃなくて、お店もそうかもしれない。いいお客さん、いい観光客を作っていくことをしていかないといけないのかもしれません。

 

終わってから、始まること

君島:今回のタイトルは「地方創生は誰のため?」というものですが、そもそも地方は活性化を望んでいるんでしょうか。あるいは、活性化とは具体的にどういう状態を指すのかいまいちみんなわからない。人口が減少していくこれからの日本において、創生や活性って一体何?っていう根本的な疑問がある気がするんですね。ナガオカさんはそのあたりはどう感じていらっしゃいますか?

ナガオカ:すでに日本では、コミュニティ活性化の名でいろいろな取り組みが試されてきたけど、どれも継続性に欠けて、結局なにも変わらなかったっていう時代を経ているんですよね。いきなり地元が元気になることはあり得ない以上、もっとゆるやかにやっていく必要があるでしょう。

「ゆるやかな観光」がキーワードになる気がしています。その土地の人はなるべく変わらないように、都会から田舎に帰ってきた若者は田舎に昔からあるものを使って外から人を呼ぶ。例えばそういう観光のあり方であれば、地元をゆるやかに活性化していくことができるかもしれませんよ。

若い人たちが都会から地方へ移るという流れは少ないとはいえ確かにあるわけで。観光が定住を促す流れになれば、人という活力が地方に再分配されます。人口減少は危機的だとされていますが、これも考え方次第でしょう。「正常な数値に戻っている」と考えればいいと思います。とはいえ、活性化をその土地が望んでいるかどうかはわかりませんから、そういう場合、僕は無理に活性化する必要もないなと思いますけどね。

君島:DINING OUTの場合、イベント自体は2日ですが、その後もさまざまな関係性は継続しているんですよね。

大類:そうですね。そのためにやっているので。むしろ、終わってからが本番みたいなところはあります。半年間やって何を築くかっていうのが、僕らの根幹なんですよ。DINING OUTは地方でやりますから、お客さんは結構な時間とお金をかけてきてくれる。しかし、それに見合った質の高いコンテンツを用意してもいるので、お客さんは世界中旅しまくってる人でも来てくれるし、みんな相当な目利きなわけですよ。その人たちがすごいって言っているのが、地元の人にとっては、ごく当たり前の生活道路だったり、古寺だったりするわけですよね。

そういう経験をした地元の人たちは当然、自分らの土地について改めて考えざるを得ない。ここがいちばん大事なところです。僕らがサポートしていくのは、そうやってはじまる関係性なんですよ。関係性が築けたかどうかは、終わってからしかわからない。だから、終わりがはじまりなんです。もし打ち上げ花火で終わっちゃったら、それは本当に大失敗ということですね。

ナガオカ:本当に考えていること、やっていることが似ていますね。『d design travel』は、その土地の「らしさ」を掘り起こすためのひとつのきっかけとして刊行しています。その回路を継続させるための手段のひとつとして、「d news」という新聞を作ったりしています。その土地の人たちの気づかないこと、よそ者じゃないと気がつけないことをいかに抽出するかという意識で作っているんです。沖縄では、県版の「d news」もできています。

でも、それらを何十万と部数を刷って書店に並べてしまうと、ムーブメントができてしまう。それはしたくないんです。だから限られた部数を刷って、この人に読んでほしいっていう人たちに手渡すようなやり方をしています。すごく丁寧にかたちにして、いいお客様を作るというか。そうしてゆるやかにその土地を盛り上げるようにしたいなと思っていますね。

 

異なる価値観とどう向き合っていくか

君島:おふたりのお話を伺っているとターゲットは狭く、かなりクローズドに営んでいくっていうあたりが、逆に成功の秘訣だったりするのかなっていうようにも思いましたが…。

大類:いやいや、ぜんぜん成功していないですよ(笑)。

ナガオカ:そうですね。まだまだビジネスとしては成立していないですから(笑)。

「成功」って何なんでしょうね。例えば、いい車に乗って、いい帽子を買って年収はこれくらいでとか。そういうものを成功だとすると、いまの10代後半から20代前半の人たちとは決定的に価値観がズレますね。彼らの成功って完全にお金じゃない。そういう意味では、これからは「成功」それ自体もみんなで考えて、前提を変えていかなきゃなと思いますね。

君島:ロングライフデザインっていう概念は、いまの若い世代が持っている価値観と共通するなと思います。

ナガオカ:大学入りたての学生たちの価値観を見ていると、僕ら世代とぜんぜん違う。僕は彼らのお父さんくらいの年代なのです。モノをいっぱい買った、それで使わない、断捨離した、でもやっぱりいいモノほしいなっていう思考回路でやってきたのが僕らの世代です。そうやって足掻いて、いい暮らしを求めた結果、気づいたことが「大事なのはモノじゃない」ということでね。そういうお父さんの背中を見ている人たち。そういう人たちがこれからの世の中を背負って立つので、手強いですよね。

君島:海外に展開することについて、どういうふうに考えているんでしょうか? おふたりは日本のいろいろな地域を掘り起こして、その価値を日本の人々に知ってもらうような活動をされてきました。昨今はインバウンドがさかんに叫ばれていますけど、そういう動きをどう感じているんでしょうか?

大類:ビジネスとしてどう成立させるかという話につながると思います。ひょっとすると、マーケットを海外まで広げて、海外の1パーセントを相手にしたら、実はすごいビジネスになるかもしれないんですよね。これはひとつヒントかもしれないって思っています。いままでは性別、年代でターゲットを区切っていました。20代前半の女性はこういう考え方だろうとか、こんな価値観だってある程度リサーチから導き出して戦略を作るのですが、いまや全く効果がないと思うんですよね。

DINING OUTに来る人って20代から80代までいます。価値観だけでつながる1パーセント。年齢や性別なんて関係ないわけですよね。デジタル時代だからこそ、世界中の同じ志向を持つ人たちとつながることができる。それがデジタルのいい面です。いずれ世界中の1パーセントを相手にするっていう意味で、僕は日本の地域もビジネスを考えるときに海外を視野に入れるべきだなと思いますね。

ONESTORYのウェブメディアも、最近遅ればせながら英語版を出しました。これがまたお金かかるから、ビジネスにならないんですけど(笑)。この英語版は、海外の人に日本のディープで魅力的な地域情報を初めて届けるデジタルメディアなんじゃないかと思いますよ。

地域の再評価でつながるアジア

君島:ナガオカさんは、海外展開についてどう思っていますか?

ナガオカ:最近、中国からすごく問い合わせがあるんですよ。そのうちの1ヶ所とはプロジェクトを進めています。都市と田舎の2拠点生活をしている人が、そこで住みながらゆるやかに観光地化していくということがはじまっています。

中国はものすごい速さで経済発展を遂げて、もう日本なんかとうの昔に追い越してしまった。しかし隣で日本の経済が疲弊しているのを知っているから、その姿が「豊かさの象徴」であり、「自分たちの未来」であるように見えている。日本の伝統工芸を若い人が継承する姿だとか、地元の風土を愛でる姿勢をすごく参考にしているんですよ。実際に中国に呼ばれていくと、日本のように伝統工芸を継承する方法を教えてくれとか言われます。中国は文化大革命の時期に、それまでの文化が徹底的に失われてしまいました。しかしそれでも、すごい技術を持った職人はまだたくさんいます。ただ、その人たちが脚光を浴びる作り手にはなっていない。そのスポットはどうやって当てるんだ、ということを中国の人たちに聞かれるわけです。

そういうこともあって、いまいろいろ勉強中なんです。海外の、特にアジア圏の人たちと日本を同時代で盛り上げていくっていう発想をした方がいいと思います。日本は日本だけ、とかではなく世界と並行していくことが大事なんじゃないでしょうか。

君島:おふたりは地方を舞台に、ものの見方であるとか、考え方を作っていらっしゃるんだと思います。その見方や考え方によって、また別の、より何かがを発掘されていく。そういうプラスの連鎖が起こっていく気がしました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

デジタル時代であるからこそ、同じ価値観を持った人同士が地域や国境を越えてつながることができます。地域の内と外をつなぐ回路=メディアをつくりだすことが、地方で展開するビジネスの価値だと語るおふたり。そして事業主体と地域、地域と顧客が継続的な関係を築いていくことが、ビジネスのサスティナビリティを担保していきます。日本の地方が重要な「資源」として認識される時代は、もうそこまで来ているのかもしれません。

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