ヒト・コト・ミライが交差する
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produced by amana

REPORT

アンリアレイジが描く、五感が導くテクノロジーとファッションの可能性

ファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の創業者の森永邦彦さんといえば、ファッションとテクノロジーを融合した革新的な表現にチャレンジし続けることで、業界内外から注目されている気鋭のデザイナーです。今回、アマナグループのプロトタイピングチームFIGLABの展示会「FIG OUT 2019 – 拡張するビジュアル表現 –」開催を記念するトークセッションの第2弾「表現で翻訳する、社会のあり様」に、森永さんをスペシャルゲストとしてお招きしました。対談相手はFIGLABのアーティスト横山徹さん。ファッションとテクノロジーが出会った結果、どんなイノベーションが巻き起こったのか? ファッションを普段、意識しない人の心にも鋭く刺さった当日のセッションの模様をレポートします。


アンリアレイジとFIGLABの接点は“R&D”

タジリケイスケ(「H」編集長/以下、タジリ):本日の会場ではアマナデザインのプロトタイピングラボラトリー「FIGLAB」の集大成というべき展覧会を開催しています。

テクノロジーをベースにサービスや新しい表現を探っているFIGLABでは、いわばR&D的な活動を展開していますが会場内にはファッションの作品はございません。にもかかわらず何故、ファッションデザイナーである森永さんをお招きしたのかといえば、森永さんの作品にR&D的な要素があるのではと。プロダクトとしてファッションだけでなくアートとしての表現も展開しながら新しいファッションの可能性を提示されていると感じまして、今日はいろいろとお話をお伺いしていきたいと思います。まず、今回のトークセッションの話を聞いたとき、どう思われましたか?

森永邦彦(デザイナー・株式会社アンリアレイジ代表取締役/以下、森永):FIGLABの活動はファッションとは全然違う文脈ですが、実は共通点が結構あると感じています。僕らは洋服を通して「共同拡張」「翻訳」というテーマに迫っていますが、そうした切り口ではFIGLABの皆さんとも接点があるのではないでしょうか。

横山徹(FIGLAB テクニカルディレクター・プログラマー/以下、横山):僕もアンリアレイジさんの活動を拝見して、まさにそう思いました。

タジリ:それでは森永さんの話の前に、FIGLABとはどんな組織なのか横山に説明していただきます。

FIGLAB テクニカルディレクター・プログラマーの横山徹

横山:FIGLABはアマナデザイン内に設けられたデジタル系を得意とするラボであり、“ビジュアルを拡張する”という考え方のもと、さまざまな形態の制作を手掛けています。主な活動領域は広告制作案件を手掛ける「Digital Contents Studio」、企業等に対するテクノロジーコンサルティングを担う「Service Design&Develop」、個々のメンバーが志向性を持ってプロジェクトを進める「Media Art/R&D」の3種類に分けられます。

「Digital Contents Studio」の例としては、eスポーツの一環としてカーレースゲーム大会での演出周りを担当しました。また、今日の会場内に展示してあるPOLAの撮影システムも手掛けています。「Service Design&Develop」についても展示してあるKOJOEのミュージックビデオ、パナソニックのAMP – Ambient Media Playerなどが代表的なところ。

 


KOJOE 「Day n Nite」MV制作(Service Design&Developの活動)

最後の「Media Art/R&D」でいえば、基本的には自主企画で行っており、弊社のプロモーションに活用したり、技術的な可能性を公の場に提示する取り組みを行っています。例えば、昨年はeインクを使った展覧会を開催しました。


afterimages – Novel images using electronic paper(Media Art/R&Dの活動)

タジリ:ありがとうございます。森永さんにお聞きしたいのですが、今日、展示会場でFIGLABの作品を見てどのように感じましたか?

森永:おもしろかったですね。なかには僕も使ったことのあるマテリアルや機構も展示されていたのですが、組み合わせによって表現の仕方が変わるのは興味深かったです。テクノロジーという存在に対して、肌感覚で分かるような変化と翻訳の仕方もあった。これがファッションに変わったらどうなるだろうと想像しながら会場を回っていました。

タジリ:ありがとうございます。では、森永さんのこれまでの活動についてご説明をお願いします。

森永:僕は「アンリアレイジ」というブランドをやっています。大学を卒業後、自分でファッションを始めて今年で15年目になりますが、最初から「A REAL(日常)」「UN REAL(非日常)」「AGE(時代)」という3つのコンセプトを洋服で表現し続けてきました。

株式会社アンリアレイジ代表取締役・デザイナーの森永邦彦さん

ブランドロゴはアルファベットの「A」と「Z」を重ねた形となっています。本来は相いれないふたつの存在が交わるその瞬間に、何かファンタジーが起こるのではないかという想いをロゴに込めています。僕自身、日常を表現したいわけでも非日常を表現したいわけでもなく、ちょうど間にあるようなものを追い求めているつもりです。

アンリアレイジのブランドロゴ

ブランドとしては過去、大きく分けて3つの時代がありました。最初はとことん手作業に頼った服づくりを行っていました。いまとは真逆のアプローチです。次の時代では洋服の造形にこだわり、人が着られないモノをどう人に着せるかというような実験的な試みを展開していました。その後、ファッションでは使われていない技術を糸や染色剤、製造プロセスに入れることで他とは違う機能を持つ洋服をつくるようになり、現在に至ります。

「○△□」をテーマにした2009 S/Sコレクション

ひとつの洋服が、複数の色を併せ持ってもいい

タジリ:ありがとうございます。個別のプロジェクトに関しても、いくつかご紹介ください。

森永:日常と非日常をテーマにしていることもあり、基本的にはふたつの状態がひとつの洋服に共存しているのが表現のベースになっています。今日持ってきたこの真っ白い洋服もそうで、外に出て紫外線を浴びると色が真っ青に変わり、かつ花柄が浮かび上がってきます。

紫外線に近いライトを当てると、模様が現れてくる

タジリ:すごいですね。動画では見ていましたが、生で見ると本当に染めたように浮かび上がってきますね。

森永:フォトクロミックという紫外線によって変色する色素を糸に入れて使っています。洋服という存在は毎年トレンドカラーに基づいて色の新旧が決まっていきます。しかしながら、本来、色そのものには新しい古いという概念はないのではないか。そんな想いをこの服に込めています。

白から水色、濃い青までのカラーバリエーションをひとつの洋服で実現できているのもこの服の特色です。私たちが見ている色は光の反射によって決まっています。白ならば光が全反射している状態ですが、この服は紫外線が当たると素材内の反射の分子構造が変化し、青だけを反射させている。

この反射の仕方が相対的なので、同じ青でも紫外線の強さなどに応じて色合いが変化していきます。日本とヨーロッパ、季節によっても紫外線量が違うので同じ青にならないというおもしろさもあります。

「COLOR」をテーマにした2013-2014 A/W コレクション

横山:この青く変わる素材自体、どれくらい持つものですか?

森永:それ、すごく良い質問です。色の変化が起きるのは500時間くらいが限度と言われています。洋服が“時間を持つ”というのはネガティブに捉えることもできますが、一方で洋服が有限になることで、新しい発想も生まれると思います。

タジリ:けれども、色が変わらなくなっただけで、着られなくなったわけではないですよね。

森永:おっしゃる通りです。色があれば良くて、色がなければ悪いわけではないですよね。最後は白から色が変わらなくなるのではなく、青から白に戻らなくなるようになります。何回も分子構造を壊して戻して光を反射させて、最後は分子が壊れて元に戻らなくなるのです。

 

「色が変わる」瞬間を表現する

タジリ:こういう技術とはどんなタイミングで出会うのですか?

森永:熱を加えると文字が消えるサーモインクのボールペンから着想を得ました。このインクを染料にして糸をつくったら人の体温で色が消えるのではないかと思い、文具メーカーに電話したんです。

横山:電話したんですか!?

タジリ:「アンリアレイジの森永です」と言って?

森永:はい(笑)。結局、他に変色剤があったので、そちらを試すことになりました。

タジリ:こうした変化は現象としてはおもしろいけれども、自分の表現や世界観とは合わないこともあると思いますが、そういうときの判断やバランスはどう取っていますか?

森永:やるべきテーマ、やりたいテーマに対して技術が合いそうな瞬間がところどころで発生します。最近でいえば大阪のスーパーで体験しましたね。生鮮食品の賞味期限をビジュアル化するべく、貼られたシールの色が経過時間に応じて変色するというものです。これをファッションに転用できたらおもしろいと思い、シールメーカーに問い合わせて……。

タジリ:また問い合わせを(笑)。

森永:話を聞くと2分から2年まで色変化の時間を設定できることが分かって、となると季節の移ろいを服で表現できそうだと、テーマを考えていきました。

タジリ:次は「色が変わる」瞬間を表現したファッションショーの動画でもご覧ください。真っ白い洋服が紫外線を浴びると、大きく色が変わっていきます。

森永:ファッションショーではプレゼンテーション的な要素を入れており、どこで誰が止まっていつ光を当てるかをすべて設計したうえで、何が起こっているかを分かりやすく見せるようにしています。

タジリ:見ている人からすると、想像を超える体験ですね。

森永:実際に目の前で服の色が変わる体験は、液晶画面で見るのとは感覚がかなり違います。このシリーズの次は、白に対してグレーのフォトクロミック(光に対して変化する素材)をつくりました。洋服は着ていると必ず陰影ができますが、この洋服は時間が経過すると紫外線が当たった部分はグレーに変色し、影の部分はそのまま白く残るという光と影の色合いが逆転する設計にしています。

光と影について考えていた際、これも反射が視覚にもたらす現象だと気づき、再び光や反射をテーマにした洋服をつくりました。下の写真のシリーズは光の反射の角度をタイトにした洋服で、光が入射した方向に真っすぐ跳ね返るような設定をしています。ペンライトを目に近い位置からこの白い服に当ててみてください。

タジリ:おーすごい。光が当たった瞬間に色と柄がぱっと浮かび上がってきますね。でも、反射の角度がタイトなので光を当てたままでも目線を外すと服は白いまま。これは光を跳ね返す特殊な素材を使っているのですか?

森永:糸にガラスビーズを巻き付けていますが、ガラスビーズの反射角度を決めています。

横山:いわゆる一般的な再帰性反射材(光源に帰っていく材料)とはまた違いますか。

森永:普通の再帰性反射材よりも、タイトに光源への反射角度を決められます。スマートフォンでフラッシュ撮影すると、画面上にかなりカラフルに美しく映し出されるので、ぜひ写真を撮ってみてください。

フラッシュ撮影する来場者たち。光が反射しない環境ではドレスは白い無地のドレスのまま(中央)
フラッシュの光が跳ね返ると色柄が浮かび上がる

森永:スマートフォンの画面上に映し出される洋服と目で見ている洋服。スマホではフラッシュが反射して柄が浮かび上がった映像を捉えるので、同じ洋服なのに見た目が全然違うんですよね。原理的には交通安全標識の反射材と同じです。そうした素材を糸にすることで、街を反射していたものがパーソナルな用途に変化していくのです。

エコーロケーション×ファッション

タジリ:視覚障害者の皆さんと取り組まれた作品《echo》について教えてください。

森永:光にはさまざまな波長が含まれていますが、人間が感じられる波長は可視光に限られています。白い色は人間には白にしか見えないだけで、例えば、感じられる波長域が違うチョウならば見え方が全く変わるわけです。

自分とは違う感覚・知覚とファッションの結び付きは拡張できるのではないか――そう考えていくと、視覚を持たない人がどう空間や色、ファッションを感じているのだろうと考えるようになり、全盲の方たちの協力を経て誕生したのが空間を知覚するウェア《echo》です。

盲目の方たちは“チッチッチ”と舌を鳴らして、その反響で空間の大きさなどを把握するそうです。エコーロケーションという手法ですが、上手な人はエコーロケーションだけで自転車に乗れたりします。空間の音の跳ね返りを聞いているという点は、イルカやコウモリが超音波を駆使して泳いだり飛んだりしているのと同じ。エコーという感覚は本来人間も持っていると言われていますが、視覚が優位なだけに衰えていると考えられています。

このエコー機能を洋服として着させられないかという発想でつくったのが《echo》です。洋服に空間との距離を測るセンサーが付いており、周囲の物体との距離を振動の強弱に変えて身体にフィードバックしていく機能を有しています。最初に振動のリズムやパターンを覚えれば、目をつぶったままでも後ろに何があるか、ここに行ったらぶつかってしまいそうだというのが分かるようになります。

目で見えないものを感じるという手法は、他の分野にも展開できるのではとも考えています。例えば、天体望遠鏡とセンサーを連動させると天体の位置を身体で感じられたり、目に見えないダニとかノミみたいなものをセンサリングしたりといったことを想定しています。そういう機能の洋服が成立していくと、それに応じた空間ができていくかしれません。目で目的地を定めて歩くのではなく、ルンバのように3Dスラムの空間に応じて動く場所を決めていくような、新しい移動方法なども洋服で実現できるのではないかと思っています。

横山:やられていることがアカデミックで研究に近いですね。

森永:研究ということでいえば、《echo》の取り組みは2年くらいやっています。アンリアレイジとライゾマティクスリサーチとダイアログ・イン・ザ・ダーク(編注:暗闇で視覚、聴覚、触覚以外の感覚を使って日常生活のシーンを体験するエンターテイメント)というように、異なる分野が混ざって成り立っているプロジェクトです。いまもアップデートしていて、振動ではないフィードバック方法を試そうという話にもなっています。振動の場合、どうしても表現が強弱のグラデーションになり、0と1を伝えるほかないのですが、引っ張るような方向感覚などを付加できるかもしれません。

 

ファッション界におけるR&Dはタブー?

タジリ:森永さんの試みはいわゆる服をつくるだけにとどまらず、アート作品のような領域にまで幅が広がっています。森永さんのなかでコレクションとこういう実験的な作品の違いはどこにあるのでしょうか?

森永:通常のコレクションではファッションのおける消費の流通にどう乗せるかを考えていきます。一方で洋服には消費だけではない在り方もあると捉えていて、それがいままで紹介したプロジェクトだったりします。洋服で人の能力を拡張することがどんなビジネス構想に繋がるかは分かりませんが、やっていかなければいけないと思っていることではあります。

タジリ:ビジネスで考えたら普段着る服をつくるのが王道だとは思いますが、なぜあえて投資をしながらこういう実験的な作品をつくり続けているのでしょう。

森永:パジャマを着たら寝たくなりますし、朝、スーツを着たらビシッとしますよね? ファッションには、人の体に直接作用できるスイッチ的な側面があるのです。本来、好きな服を着ればテンションが上がるから買いたいという欲求が生まれますが、「新しい感覚を得るために洋服を身に付ける」というような考え方が生まれれば、その結果、洋服そのものの力が戻ってくるのではないかと思っています。

タジリ:具体的にアイデアの構想から最終的に形になるまでに、どういうプロセスになっているのですか。デザインを起こしてから、場合によってはメーカーに問い合わせをしたり、糸など素材の開発をしたりという流れでしょうか?

森永:コレクションのスパンをみると3カ月しか制作期間がありません。なので糸は糸で、形は形で、色は色で、すべて並行して行っていきます。ショー本番の2週間くらい前に各要素が出そろい、そこからパズルを組み立てていく感覚です。

タジリ:かなりタイトなスケジュールですね。

森永:ぐちゃぐちゃですけど、15年間これをやっていると普通になっていて。ただ、コレクションは1シーズンでも発表しなかったら、売り上げがなくなりブランドが終わってしまいます。だからリスクはずっと感じていますね。

タジリ:そう考えるとビジネス的なところだけやるのが王道だと思いますが、それでもなおR&D的な作品を表現されるのですね。

森永:もちろんR&D的なところだけだと確実に続いていかないですし、そもそもファッション界にはR&Dをやる概念があまりありません。

「H」編集長・モデレーターのタジリケイスケ

タジリ:打ち合わせした際に「ファッション界におけるR&Dはタブー」といった話をされていましたが、その真相を聞かせてください。

森永:ファッション業界には、オーソドックスに“美を競う”という概念が根底に存在していることが大きいのでしょう。パリに行くと思うのですが、パリのファッションの軸にある「エレガンス」という解釈がすごく難しい。人によっても文化によってもエレガンスの形は多様ですから。

けれども、色が変わるという現象を見た瞬間の驚きならば、かなり普遍性があるのではないでしょうか? これならばファッションに興味ない人に対しても訴えかけられると思ったからこそ、R&D的なところで勝負したいですし、開発し続けていかなければと感じています。

タジリ:かなり尖ったアプローチですよね。体験や驚きといった設計することが難しいことを具体的にビジュアルや形、現象に落とし込んでいく。これは横山さんも普段から実践されていることですか?

横山:そうですね。僕なりの定義としては、「手を動かしながら何かを変えていく」というのがR&Dなのではないかと思っています。その点は森永さんの手法と同じですね。

森永:いまの時代、流通する洋服が多くなっているだけに売れる服をつくるのは難しい面が多々ありますが、だからといって、「売れない」洋服をつくり続けるというのはやりたいことと全然違います。ならば、どうやって自分がファッションを通じて生きていくのかを考えていくと、適正な量を適正な価格で販売するのではなく、自分たちが提示した価値で勝負し続けていきたいというところに行き着いたんです。

僕がファッションを始めた源泉には、「ほんの少し社会の流れを変えたい」「洋服が一人ひとりに作用していくことで、大きなものを変えられるのでは」といった想いが存在しています。そうであるならば、僕たちの提示する価値はファッションを拡張していくことだと思います。

 

違う方向へ走り続けるということ

タジリ:ファッションを拡張していくときに最終的なゴールはありますか?

森永:実はいまのファッション界においては、「他にはない洋服」をつくるのが難しくなっています。新しい洋服をつくる環境が続いていく仕組みをつくりたいというのはありますね。

タジリ:どういうところが難しくなっているのですか?

森永:新しいことが求められているジャンルでもなくなってきていると思います。

タジリ:それは消費者側が求めてないということでしょうか? いわゆるファストファッションの広がりにより、それこそ“着られれば問題ない”という価値観が広がったからですかね?

森永:いまのファッション界では、「サステナブル」という視点が大きくなっています。サステナブルであるために、適正な量をロスなく、なるべくオーダーメイドに近いようなカスタマイゼーションをしていきましょう――そんな流れになっています。新しい何かをつくり出して業界をリードして引っ張っていくというよりは、その人にちゃんと寄り添うものをつくりましょうと。

タジリ:「これが流行るだろうから、こんな方向性の物をたくさんつくろう」というよりも、あなたや小さな集団のためにつくりましょうということですね。

森永:なので、僕はそうじゃない方向に(笑)。新しいモノをつくって「良いでしょ?」って言いたいタイプです。

タジリ:サステナブルな方向に業界全体が動いているなかで、全然違う方向に行っているというような批判はありますか?

森永:サステナブルというテーマに関しては僕たちも手掛けているので、この点では批判はありません。ただ、最初は結構、批判もありました。特にパリは自分たちの文脈(エレガンス的)ではないものを受け入れづらい環境でしたから難しかったですね。

横山:服でテクノロジーに注力すると、服の存在が薄くなる可能性があると思いますが、どうやって服を際立たせていますか?

森永:ファッションは結構、媒体として弱いというか、あまり強度がないです。どんなに僕たちが頑張って洋服をつくったとしても、居酒屋に行ってパッと脱がれてしまえば、ファッションという存在は煙に巻かれたように消えてしまいます。そんな弱いファッションという存在に、テクノロジーなどの強度ある表現が入ってくると負けてしまいます。

そうした事態を防ぐために、僕の場合はコンセプトを軸としています。設定したコンセプトを表現するために“服がないと表現できない”という環境をつくってから、テクノロジーなどを入れるようにしています。

ただ、表現としては強いテクノロジーですが、進化していくとみんな同じモノを持つようになります。iPhoneなどがそうですね。

タジリ:コモディティ化していきますよね。

森永:人と同じでも良いモノと悪いモノってありますよね。目の前の人と同じiPhone使っていても違和感ないですが、同じTシャツを着ていたらなんか嫌だなとか(笑)。この点にファッションのファッションたる所以がまだ残されていると思っています。

Photographs by Kelly Liu
Text by Akio Sato

2019/12/12

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